「お母さん、最近ちゃんと眠れてる?」実家に顔を出したとき、テーブルの向こうで欠伸を繰り返す母の顔色が気になったという方も多いのではないでしょうか。
「夜中に何度も目が覚める」「朝早くに目が覚めてしまって、そこから眠れない」――高齢の親からそんな言葉を聞くと、認知症や体調不良のサインではと不安になりますよね。
実は、季節の変わり目である秋は、自律神経の乱れや日照時間の変化によって、高齢者の睡眠の質が下がりやすい時期です。この記事では、親の不眠が起きやすい理由と、今日から家族で取り組める安眠のための工夫、そして受診を考えるべきサインについて、わかりやすくお伝えします。
秋に親の不眠が増える理由
朝晩の気温差が自律神経を乱す
秋は日中と朝晩の気温差が大きく、体温調節を担う自律神経に負担がかかりやすい季節です。自律神経が乱れると、夜になっても交感神経が優位なままになり、寝つきが悪くなったり眠りが浅くなったりします。
特に80代など高齢の親では、この温度差に体がついていきにくく、「布団に入ってもなかなか眠れない」という訴えが増える傾向があります。
日照時間の短縮で体内時計がずれる
日没が早まる秋は、日光を浴びる時間が自然と短くなります。太陽の光は体内時計をリセットし、夜に眠気を促すメラトニンの分泌を整える役割を持っています。
日中家にこもりがちな高齢の親は、この光の刺激が不足しやすく、体内時計が乱れて「夜に眠れず、日中にウトウトする」という昼夜逆転気味の生活になりやすいのです。
加齢そのものによる睡眠の変化
そもそも加齢に伴い、深い眠りの時間が短くなり、途中で目が覚めやすくなることは自然な体の変化でもあります。「若い頃は朝まで一度も起きなかったのに、今は2時間おきにトイレで目が覚める」という声もよく聞かれます。
こうした変化自体は病気とは限りませんが、日中の生活に支障が出るほどの不眠が続く場合は、後述するように専門機関への相談を検討したい段階です。
今日からできる安眠のための工夫
朝の光を浴びる習慣をつくる
体内時計を整える一番の近道は、朝起きたらすぐにカーテンを開けて光を浴びることです。「お母さん、今日は朝ごはんの前に少しベランダに出てみようか」と声をかけ、朝の散歩やベランダでの日光浴を10〜15分ほど習慣にするだけでも、夜の寝つきが変わってくることがあります。
曇りの日でも屋外の光は室内照明よりずっと明るいため、天気を気にしすぎず外に出ることをすすめてみましょう。
寝室の温度と湿度を見直す
秋は日によって寒暖差が大きいため、寝具の調整も欠かせません。手足の冷えで眠りが浅くなる親には、吸湿発熱タイプの敷きパッドや、締め付けの少ない軽い掛け布団への切り替えが効果的なことがあります。
空気の乾燥も眠りを妨げる要因のひとつです。加湿器で寝室の湿度を50〜60%程度に保つと、喉の乾燥からくる咳き込みも減り、夜中に目が覚めにくくなります。加湿器の選び方は以前の記事「秋冬の乾燥から親を守る|加湿器の選び方」でも詳しく紹介していますので、あわせて参考にしてください。
日中の活動量と生活リズムを整える
日中に体を動かす機会が少ないと、夜になっても体が疲れておらず、眠気が訪れにくくなります。散歩や家事、ラジオ体操など、無理のない範囲で体を動かす時間をつくることが、結果的に夜の睡眠の質を高めます。
秋は気温の変化で体調を崩しやすく、だるさから活動量が落ちてしまう親も少なくありません。以前紹介した「高齢者の秋バテ対策|だるさ・食欲不振を防ぐ生活習慣」の工夫もあわせて実践すると、昼夜のリズムが整いやすくなります。
なお、寝つきや首・肩の負担が気になる場合は、高さを調整できる枕を取り入れるのも一つの方法です。日常使いできるアイテムとしてこちらも参考にしてみてください。
💡 こちらのアイテムも参考になります
高さ調整できるふわふわ安眠枕
参考価格:¥3,680〜(楽天市場)
横向き・仰向けどちらでも使える高さ調整式
また、朝の光を浴びに行けない日もあるという方には、光で自然に目を覚ます目覚まし時計を取り入れる家庭も増えています。設定した時刻に少しずつ明るくなる光で、無理なく起床のリズムを整えられます。
💡 こちらのアイテムも参考になります
光目覚まし時計(ホワイトノイズ機能付き)
参考価格:¥5,980〜(楽天市場)
光と音で自然に起床リズムを整える
そのほか、肌触りのよい寝具やパジャマなど、安眠グッズをまとめて探したい場合はこちらもチェックしてみてください。
🛒 関連アイテムはこちら
安眠グッズ 高齢者をAmazonで見る
寝具やパジャマなど幅広く探せます
不眠が続くときに気をつけたいこと
「眠れないから」と市販薬に頼りすぎない
なかなか眠れない親を見ていると、「薬に頼ってでも眠らせてあげたい」と思う家族もいるかもしれません。ただし、睡眠に関わる薬は種類によって効果や体への影響が大きく異なり、高齢者はふらつきや翌日の眠気といった副作用が出やすいことも知られています。
自己判断で市販薬を使い続けるのではなく、まずはかかりつけ医に相談し、生活習慣の見直しと並行して対応を考えることが大切です。ここでご紹介した内容はあくまで一般的な情報であり、個々の症状の診断や治療に代わるものではない点もご承知おきください。
こんなサインがあれば早めに相談を
以下のような様子が見られる場合は、単なる加齢による変化ではなく、他の要因が背景にある可能性も考えられます。自己判断で様子を見続けず、かかりつけ医や専門医、地域包括支援センターに相談することをおすすめします。
- 眠れない日が1か月以上続いている
- 日中の眠気で転倒やヒヤリハットが増えた
- 大きないびきや呼吸が止まるような様子がある
- 気分の落ち込みやもの忘れの悪化を伴う
こうした様子だけで特定の病気を判断することはできませんが、家族が「いつもと違う」と感じた変化は、専門家に伝える大切な手がかりになります。
「最近眠れてないみたいだけど、一度かかりつけの先生に相談してみない?眠れないこと自体、我慢しなくていいことだから」というように、責めるのではなく心配している気持ちを伝える声かけを意識してみましょう。
親の「眠れない」に、家族としてできること
遠方に暮らす家族として、実家に帰るたびに母の顔色や口数の変化に気づかされることがあります。電話越しでは「元気よ」の一言で終わってしまう会話も、直接顔を合わせると「実はあまり眠れていない」という本音がこぼれることも少なくありません。
不眠は本人が我慢してしまいやすい悩みだからこそ、家族から「眠れてる?」とさりげなく聞いてみることが、最初の一歩になります。
今日からできることは、特別なことではありません。朝のカーテンを開ける、寝室の温度と湿度を整える、気になる症状があれば早めにかかりつけ医に相談する――小さな積み重ねが、親の毎日の眠りを支えることにつながります。
次に実家に帰ったときは、ぜひ「最近よく眠れてる?」のひと言から始めてみてください。
この記事の執筆者について
介護福祉の現場で22年以上、訪問介護や高齢者施設での勤務、自宅での家族介護を経験してきました。現在も遠方に暮らす高齢の家族がおり、「離れて暮らす家族を見守る」ことの難しさを実感者として日々感じています。本記事も、そうした現場と実生活の両方の経験をもとに執筆しています。
