親の予防接種|インフル・肺炎球菌ワクチンの受け方

11月に入って一気に冷え込んだある朝、仕事帰りに実家に顔を出すと、84歳の父が「ちょっと喉が痛くてね」と小さく咳をしていました。そんな場面にドキッとしたご家族も多いのではないでしょうか。夏の疲れが抜けきらないまま迎える秋から冬にかけては、高齢者にとってインフルエンザや肺炎などの感染症リスクが一段と高まる時期です。この記事では、なぜこの季節に感染症リスクが高まるのか、そして家族として今からできる予防接種の受け方や日常の備えについて、具体的にご紹介します。

なぜ秋冬に高齢者の感染症リスクが上がるのか

加齢とともに免疫力は静かに低下していく

年齢を重ねると、体内でウイルスや細菌と戦う免疫細胞の働きが徐々に弱まっていきます。若い頃なら数日で治っていた風邪が、長引いたり、こじれて肺炎に進んでしまったりすることも珍しくありません。「最近、風邪をひくと治りが遅くなった気がする」と感じている親御さんがいたら、それは自然な体の変化のサインかもしれません。

特に一人暮らしで食が細くなりがちな80代の方や、糖尿病・心臓病・呼吸器の持病を抱える方は、感染症が重症化しやすいといわれています。75歳以上の後期高齢者も同様に注意が必要です。日頃の食事量が減っていないか、疲れやすくなっていないかも、あわせて気にかけてあげたいポイントです。こうした方々については、家族が積極的に予防接種のスケジュールを一緒に確認してあげることが、大きな安心につながります。

朝晩の気温差が体と血圧に負担をかける

秋は日中と朝晩の気温差が大きく、体温調節機能が衰えている高齢者にとっては特に負担がかかりやすい季節です。血管の収縮・拡張がうまく追いつかず、体調を崩しやすくなるだけでなく、血圧の変動にもつながります。「昨日は暑かったのに今朝は肌寒い」というような日が続くと、知らないうちに体力を消耗してしまうこともあります。

気温差による体調変化については、夏に増える高齢者の血圧変動|家族が知っておきたい対策でも詳しく触れていますので、あわせてチェックしてみてください。

肺炎を「たかが風邪」と侮れない理由

厚生労働省の統計でも、肺炎は高齢者の死亡原因の上位に挙げられています。誤嚥性肺炎のように飲み込む力の低下が関係するケースもありますが、インフルエンザなどのウイルス感染をきっかけに肺炎を併発することも少なくありません。「たかが風邪」と侮らず、早めの対策を意識することが大切です。

鼻水やくしゃみが長引くと「風邪かな」「花粉症かな」と判断に迷うこともあります。今年はいつもと違うと感じたら自己判断で様子を見続けず、症状の見分け方については高齢者の秋の花粉症|風邪と見分けるサインと対策も参考にしながら、必要に応じて早めにかかりつけ医へ相談しましょう。飲み込む力の低下が気になる場合は、高齢者のむせ・誤嚥のサインと今日からできる対策も参考にしてください。

家族と談笑する高齢の女性
家族との会話を楽しむひととき

インフルエンザ・肺炎球菌・帯状疱疹ワクチンの受け方

インフルエンザワクチンは10月後半〜11月中に

インフルエンザの予防接種は、例年10月頃から医療機関や自治体の窓口で受け付けが始まります。効果が出るまでには接種から2週間ほどかかるとされているため、流行が本格化する12月より前、できれば11月中までに済ませておくと安心です。「毎年つい後回しにしてしまう」というご家庭は、家族カレンダーに予定を書き込んでおくのもおすすめです。

「お父さん、今年もそろそろインフルエンザの予防接種の時期だね。一緒に病院に行こうか」と、家族から声をかけてあげるだけでも、重い腰を上げるきっかけになります。予約が必要な医療機関も多いため、早めに電話で確認しておくとスムーズです。

肺炎球菌ワクチンの定期接種と自治体の助成

インフルエンザワクチンほど知られていませんが、65歳以上を対象に肺炎球菌ワクチンの定期接種制度があり、自治体によっては費用の助成が受けられます。過去に接種歴があるかどうかは本人も忘れていることが多いため、お薬手帳や母子健康手帳のような「予防接種の記録」を家族で確認しておくと安心です。

国立長寿医療研究センターなどの情報も参考にしながら、持病の有無や体調を踏まえて、必ずかかりつけ医にご相談ください。自治体の助成制度は年度や年齢によって条件が異なるため、市区町村の窓口やホームページで確認しておくと二度手間になりません。

帯状疱疹ワクチンなど他の選択肢も

インフルエンザや肺炎球菌以外にも、50代以降で接種を検討する方が増えているのが帯状疱疹ワクチンです。過去に水痘(水ぼうそう)にかかったことがある方は、加齢や疲労をきっかけに帯状疱疹を発症するリスクがあるとされています。すべての方に必要というわけではありませんが、気になる場合はかかりつけ医に相談し、体質や持病を踏まえたうえで検討するとよいでしょう。

実際に私が現場で担当していた利用者様の中にも、肺炎球菌ワクチンをすでに受けていたかどうかご本人もご家族も把握しておらず、接種当日になって慌てて自治体に問い合わせたケースがありました。予防接種の記録は、お薬手帳と一緒に家族で共有しておくと、こうした行き違いを防げます。

遠方に暮らす家族の場合は、電話で「もう予防接種受けた?」と聞いても、本人があいまいな返事をすることもあります。私自身も離れて暮らす母に同じことを聞いて「たぶん受けたと思う」と言われ、結局帰省したタイミングでお薬手帳を一緒に確認したことがありました。電話だけで済ませず、帰省時にまとめて確認する機会を作っておくと安心です。

予防接種前に確認しておきたいチェックリスト

  • 接種当日は体調が良い日を選ぶ(発熱・体調不良時は延期)
  • 現在服用している薬をかかりつけ医に伝える
  • 過去にワクチンでアレルギー反応が出たことがないか確認する
  • お薬手帳などで過去の接種歴を確認しておく
  • 自治体の助成制度・費用を事前に窓口で確認する
  • 新型コロナワクチンなど他の予防接種と時期が重なる場合は、接種間隔をかかりつけ医に確認する
予防接種を受ける様子のイメージ
早めの予防接種が安心につながる

予防接種と合わせて、室内の湿度管理も大切なポイントです。空気が乾燥するとウイルスが活発になりやすく、喉や鼻の粘膜のバリア機能も低下してしまいます。加湿器を置く、こまめに換気する、外出後の手洗い・うがいを習慣にするなど、日々の小さな積み重ねが感染予防につながります。

体調に不安があるときは、指先で手軽に血中酸素飽和度を確認できる機器を家庭に置いておくと、いつもと違う変化に早く気づける安心材料になります。なお、日常使いできるアイテムとしてこちらも参考にしてみてください。

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室内の乾燥が気になる季節には、手軽に置ける加湿器を活用するご家庭も増えています。

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外出時や来客時の感染対策の備えに

接種にまつわるよくある失敗と家族が気をつけたいこと

加湿器のイメージ
室内の乾燥対策も感染予防の一歩

「持病があるから」と接種をためらってしまう

持病がある方こそ感染症が重症化しやすいため、本来は積極的な接種が勧められるケースが多くあります。ただし体調や薬の種類によっては接種を控えるべき場合もあるため、自己判断で諦めてしまわず、必ずかかりつけ医にご相談ください。迷ったときは、お住まいの地域包括支援センターに相談すると、かかりつけ医選びや制度の窓口を教えてもらえることもあります。

なお、この記事でご紹介している内容はあくまで一般的な情報であり、個別の診断や治療の代わりになるものではありません。持病の種類や体調には個人差があるため、具体的な判断は必ず医療機関にご確認ください。

接種した安心感で基本の対策を油断してしまう

ワクチンを受けたからといって、100%感染を防げるわけではありません。接種後も引き続き、手洗い・うがい・室内の換気といった基本的な対策を続けることが大切です。「もう打ったから大丈夫」と気を緩めすぎないよう、家族からもさりげなく声をかけてあげましょう。

予約や当日の付き添いを一人に任せてしまう

電話予約やインターネット予約に慣れていない親御さんの場合、手続きの煩雑さから接種そのものを先延ばしにしてしまうこともあります。可能であれば予約の代行や当日の付き添いを家族で分担し、負担を減らしてあげることも予防の第一歩です。体調管理については、高齢の親の血圧計選び|正しい測り方と続けるコツも参考になります。

季節の変わり目に起きやすい体調不良については、高齢者の秋バテ対策|季節の変わり目に注意したい体調変化もあわせてご覧ください。きょうだいや親戚が複数いる場合は、誰がいつ病院に付き添うかを事前に相談しておくと、当日になって慌てることがありません。ちょっとした声かけと役割分担が、家族みんなの安心につながります。

まとめ

秋から冬にかけては、高齢者にとって感染症リスクが高まる季節です。インフルエンザワクチンは10月頃から、肺炎球菌ワクチンは自治体の助成制度も確認しながら、家族で早めに予定を立てておきましょう。帯状疱疹ワクチンのように意外と知られていない選択肢も含め、迷ったときはかかりつけ医や地域包括支援センターに相談する習慣をつけておくと安心です。

カレンダーに予防接種の予定をひとつ書き込むだけで、年末年始を迎える安心感は大きく変わります。この記事を読んだ今日中に、家族のどなたか一人でも、実家に電話をかけて予防接種の予定を確認してみてください。その小さな一歩が、冬を安心して過ごすための備えになります。


この記事の執筆者について

介護福祉の現場で22年以上、訪問介護や高齢者施設での勤務、自宅での家族介護を経験してきました。現在も遠方に暮らす高齢の家族がおり、「離れて暮らす家族を見守る」ことの難しさを実感者として日々感じています。本記事も、そうした現場と実生活の両方の経験をもとに執筆しています。

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