先日実家に顔を出すと、お父さんが台所でぶかぶかの靴下のまま、フローリングの上をつるつると滑るように歩いていて、思わず「危ない!」と声をあげてしまった方もいらっしゃるのではないでしょうか。本人は「家の中だから大丈夫」と気にしていなくても、靴下やスリッパの選び方ひとつで、転倒のリスクは大きく変わってきます。この記事では、高齢の親が室内で転びやすくなる原因と、今日から取り入れられる滑り止め靴下・スリッパの選び方、そして家族としてできる工夫をご紹介します。

なぜ高齢の親は「靴下・スリッパ」で転倒しやすいのか
靴下の生地が滑りやすくなる理由
一般的な靴下は、履き込むうちに生地が薄くなり、フローリングやビニール床材との摩擦力が低下していきます。特に化学繊維混紡の靴下は滑りやすく、新品のときとはまったく違う履き心地になっていることも珍しくありません。「最近靴下がすぐビリビリになる」「気づけば足元がヒヤッとする」と感じたら、生地が薄くなって滑りやすくなっているサインかもしれません。買い替えのタイミングを逃さないよう、定期的にチェックする習慣をつけておきたいところです。
すり足歩行と筋力低下の影響
加齢とともに足腰の筋力が低下すると、足を高く上げずに歩く「すり足歩行」になりやすくなります。すり足のまま靴下やスリッパで歩くと、わずかな段差やカーペットの端、コード類などに引っかかりやすく、バランスを崩す大きな原因になります。国立長寿医療研究センターでも、加齢に伴う歩行機能の変化が転倒リスクを高めると指摘されています。日頃の歩き方の変化に、家族が早めに気づいてあげることが大切です。
「室内だから大丈夫」という思い込みの危険性
消費者庁や厚生労働省の資料でも、高齢者の事故の多くが自宅内、それも居室や台所、廊下などの日常的な生活動線で起きていることが報告されています。「外と違って家の中は安全」という思い込みが、かえって注意力を下げてしまうことがあるのです。実際、転倒による骨折がきっかけで、寝たきりや要介護状態に移行してしまうケースも少なくありません。だからこそ、足元の備えは早いうちから見直しておく価値があります。
夏場は「汗による湿り」も見落とせない
転倒というと冬場の乾燥した床をイメージしがちですが、実は夏場も注意が必要です。汗をかいた足で靴下やスリッパの底が湿ると、思った以上に滑りやすくなります。エアコンをつけずに過ごす高齢者も多いため、汗をかきやすい季節ほど、足元の湿り気に気を配ってあげることが転倒予防につながります。
今日からできる転倒予防の工夫
滑り止め付き靴下・スリッパの選び方
靴下やスリッパを選ぶときは、足裏に滑り止め加工(グリップ)が施されているものを選びましょう。かかとまですっぽり覆うタイプは脱げにくく、つまずきの原因になりにくいためおすすめです。サイズは実際の足のサイズよりもややゆったりめを選ぶと、指先が圧迫されず、むくみがある日でも快適に履くことができます。
- 足裏全体に滑り止め加工があるものを選ぶ
- かかとまで覆うタイプで脱げにくいものを選ぶ
- 指先を締め付けないゆとりのあるサイズを選ぶ
- 洗濯機で洗える素材だと衛生的に使い続けられる
家族が連携してできること
「新しい靴下、一緒に選びに行こう」と声をかけ、本人が納得したうえで買い替えを提案すると、抵抗なく受け入れてもらいやすくなります。帰省したタイミングで、靴下の裏がすり減っていないか、スリッパのかかとが潰れていないかを一緒にチェックする習慣をつけるのも効果的です。玄関や廊下の照明が暗いと足元が見えづらくなるため、あわせて明るさも確認しておきましょう。
会話の一例としては、「お父さん、この靴下の裏、もうツルツルになってるね。滑り止め付きのものに変えてみない?」というように、責めるのではなく気づいたことをそっと共有する声かけを意識すると、本人も受け入れやすくなります。
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いろいろな種類から本人に合うものを探せます

離れて暮らしていて頻繁に様子を見に行けない場合は、宅配便で滑り止め付きの靴下を送るだけでも十分な支援になります。「使ってみて感想を聞かせてね」と一言添えて贈ると、押しつけがましくならず、自然に足元の見直しを促すことができます。届いたものを実際に履いてもらい、電話で感想を聞くことも、さりげない見守りの機会になります。
注意したいポイント・よくある失敗
滑り止め靴下やスリッパを取り入れる際には、いくつか注意しておきたい落とし穴もあります。良かれと思って選んだものが、かえって転倒リスクを高めてしまうこともあるため、以下のポイントを確認しておきましょう。
- サイズが大きすぎる靴下やスリッパをそのまま履かせてしまう
- 「見た目が気に入らない」と本人が新調を嫌がり、古いものを履き続けてしまう
- 靴下を重ね履きして、かえって滑りやすくなってしまう
- 浴室からの導線で、裸足からスリッパへの履き替えが徹底されていない
特に見落とされがちなのが「重ね履き」です。寒さ対策のつもりで靴下を二枚重ねると、生地同士が滑って逆にバランスを崩しやすくなることがあります。防寒については、靴下の枚数を増やすのではなく、足首まで暖かい厚手タイプを一枚選ぶ方が安全です。
また、すでに転倒したことがある方や、足のしびれ・むくみが気になる方は、靴下選びだけで対応せず、必ずかかりつけ医にご相談ください。歩き方そのものに変化がある場合は、リハビリや装具の相談が必要なこともあります。
浴室・キッチンでの転倒対策については、夏に増える高齢者の転倒事故|浴室・キッチンで今すぐできる対策でも詳しく解説しています。また、廊下や階段への手すりの設置を検討している場合は、室内手すりで防ぐ転倒事故|介護保険の住宅改修費補助もあわせてご覧ください。

価格の安さだけで選んでしまうと、滑り止め加工がすぐにはがれてしまう製品もあります。多少値が張っても、洗濯を繰り返しても効果が持続するタイプを選んだほうが、結果的に安心につながります。購入前にレビューで「滑り止めの耐久性」に関するコメントを確認しておくのもおすすめです。
まとめ
靴下やスリッパは、毎日何気なく身につけるものだからこそ、選び方ひとつで転倒のリスクを大きく減らすことができます。「まだ元気だから大丈夫」と思っていても、足元の小さな変化は本人が気づきにくいものです。まずは実家に帰ったときに、お父さん・お母さんの足元をさりげなく確認することから始めてみませんか。
滑り止め付きの靴下やスリッパへの買い替えは、決して大がかりな準備が必要なものではありません。今日、電話で「今度靴下を一緒に選びに行こうね」と声をかけてみるだけでも、大きな一歩になります。一人暮らしの継続を支えるための工夫については、高齢の親が一人暮らしを続けるために家族ができることも参考にしながら、小さな工夫を積み重ねていきましょう。

