先日お盆で実家に帰省したとき、お茶を飲みながら母が「もしもの時のこと、そろそろちゃんと話しておきたいの」とぽつりと切り出して、思わず箸を止めてしまった方も多いのではないでしょうか。
いざそう言われると、何をどう聞けばいいのか分からず、つい話をそらしてしまった…という経験がある方も少なくないはずです。財産の話や葬儀の希望は、なんとなく切り出しにくいテーマだからこそ、後回しにされがちです。
この記事では、家族の負担を減らし、もしもの時に慌てないための「エンディングノート」の書き方と、親子で無理なく話し合いを始めるコツを、家族目線でわかりやすく紹介します。
とはいえ「何から手をつければいいのか分からない」という方がほとんどでしょう。まずはエンディングノートの基本と、書き始めるタイミングから見ていきましょう。
エンディングノートとは何か・なぜ今書いておくべきか
遺言書との違い
エンディングノートは、法的効力を持つ遺言書とは異なり、財産の分け方を法的に決めるものではありません。医療・介護の希望、資産や保険の情報、友人関係、葬儀の希望など、家族が「知っておきたいこと」を自由に書き残しておくためのノートです。
財産分与に法的な効力を持たせたい場合は別途遺言書が必要ですが、エンディングノートはハードルが低く、気軽に書き始められる点が大きな特徴です。
実は先日、父の同級生が急に体調を崩し入院した際、ご家族が通帳の場所も保険の連絡先も分からず、対応にとても苦労したという話を聞きました。「うちも同じことになるかもしれない」と、他人事ではないと感じた方もいるのではないでしょうか。
書いていないと家族が困ること
もしもの時、通帳やキャッシュカードの保管場所、加入している保険、かかりつけ医の連絡先などが分からず、家族が慌てて探し回るケースは少なくありません。
特に、延命治療をどこまで望むかといった医療の希望が分からないと、家族は本人の意思を推し量りながら重い決断を迫られることになります。事前に希望が書き残されているだけで、家族の心理的な負担は大きく軽減されます。医療に関する希望は、必ずかかりつけ医にもご相談ください。
書き始めるのに良いタイミング
「まだ元気だから」と先延ばしにしがちですが、実は元気なうちに書き始めるほうが、本人の気持ちの整理もしやすく、内容も充実しやすいと言われています。
お盆や年末年始など、家族が顔を合わせる機会は、自然に話を切り出せる貴重なタイミングです。誕生日や敬老の日をきっかけに、ノートをプレゼントするご家庭もあります。
今日からできる書き方・家族との話し合い方
今日からできること
まずは市販のエンディングノートを1冊用意し、書けるところから少しずつ埋めていくのがおすすめです。以下のような項目から始めると取り組みやすいでしょう。
- 預貯金・保険・年金など資産に関する情報
- かかりつけ医や持病、服薬中の薬の情報
- 延命治療や介護についての希望
- 葬儀・お墓に関する希望
- 友人・知人の連絡先、大切な人へのメッセージ
すべてを一度に埋める必要はありません。まずは資産情報や医療の希望など、家族が実際に困りやすい項目から着手すると効果的です。
デジタル情報の整理も忘れずに
最近はスマートフォンの中に、写真や連絡先だけでなく、ネットバンキングやサブスクリプションサービスのID・パスワードなど、大切な情報が詰まっています。これらは家族が把握していないと、解約や引き継ぎができず放置されてしまうことがあります。
スマートフォンのロック解除方法や、よく使うアプリの一覧をエンディングノートに書き添えておくだけでも、いざという時に家族が困らずに済みます。
家族が連携してできること
本人にいきなり「エンディングノートを書いて」と伝えると、身構えられてしまうこともあります。「もしもの時に困らないように、一緒に整理しておきたいな」といった声かけから始めると、抵抗感なく受け止めてもらいやすくなります。
実際の声かけ例としては、「お父さん、通帳や保険証書がどこにあるか、私も一応知っておきたいんだけど」「もしもの時、お母さんはどうしてほしいか聞いておきたいな」といった、日常会話の延長で切り出す方法がおすすめです。
また、書いた内容は本人だけで抱え込まず、保管場所を家族で共有しておくことも大切です。スマホが苦手な高齢の親と繋がる家族の連絡術で紹介しているような、普段のやり取りの延長で少しずつ確認していくとよいでしょう。
きょうだいが複数いる場合は、誰か一人に任せきりにせず、「資産の確認は兄が」「医療の希望を聞くのは妹が」といった形で役割を分担すると、負担が偏らずスムーズに進められます。
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財産分与まで法的に確定させておきたい場合は、あわせて遺言書の準備も検討してみましょう。
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自筆証書遺言の作成をサポートするキットです
注意点・よくある失敗
エンディングノートを書く際、いくつか注意しておきたい点があります。
- 法的効力はないため、財産分与を確定させたい場合は別途遺言書が必要
- 書いた後、家族に保管場所を伝えていないと見つけてもらえない
- 一度書いて満足してしまい、内容が更新されないまま古くなる
- 本人の意思を確認せず、家族だけで話を進めてしまう
財産分与を法的に確定させたい場合や、相続でトラブルが予想される場合は、公証役場や専門家に相談しながら遺言書の作成も検討しましょう。内容は年に一度など、定期的に見直す習慣をつけておくと安心です。
また、ノートに書いた内容が本人の希望と食い違ったまま家族だけで進めてしまうと、後になって「聞いていた話と違う」というトラブルにつながることもあります。定期的に本人と一緒に内容を確認し、気持ちの変化があれば書き直せるようにしておきましょう。
まとめ|今日から少しずつ、家族の安心のために
エンディングノートは、決して縁起の悪いものではなく、家族への思いやりの形のひとつです。すべてを一度に書き上げようとせず、書けるところから少しずつ埋めていくだけでも、もしもの時の家族の負担は大きく変わります。
公的な手続きについては高齢者が使える公的サービス・補助制度まとめも参考にしながら、必要な情報を一緒に整理していきましょう。また、高齢の親が一人暮らしを続けるために家族ができることと合わせて、将来を見据えた備えを進めていくと安心です。
なお、医療や介護に関する具体的な希望については、必ずかかりつけ医や地域包括支援センターにも相談しながら整理していくことをおすすめします(参考:厚生労働省、国立長寿医療研究センター)。今日、実家に電話をかけて「今度一緒にノートを書いてみない?」と、ひとこと伝えてみることから始めてみませんか。

