先日実家に帰ると、お父さんが廊下の壁に手をつきながら歩いているのを見て、思わず胸がざわついた方も多いのではないでしょうか。特に暑い季節は脱水や立ちくらみで足元がふらつきやすく、ちょっとした段差や滑りやすい床で転倒してしまう高齢者が増えます。
「まだ大丈夫」「手すりなんて大げさ」と本人は言いがちですが、実際に自宅で転倒した高齢者の多くは、事故が起こるまで自分がそこまで危険な状態だとは思っていなかったと言います。日々の小さな違和感を見逃さないことが、大きな事故を防ぐ第一歩になります。
この記事では、自宅の廊下やトイレ、浴室に手すりを取り付けることで転倒リスクを減らす具体的な方法と、介護保険の住宅改修費補助を活用して費用負担を抑えるコツを、家族目線でわかりやすく紹介します。

夏に転倒事故が増える理由と自宅の危険箇所
脱水・立ちくらみで足元がふらつきやすい
暑さで汗をかくと体内の水分や塩分が失われ、血圧が急に下がる「起立性低血圧」が起こりやすくなります。急に立ち上がった瞬間にクラッとして、そのまま転倒してしまうケースは少なくありません。
国立長寿医療研究センターも、高齢者は夏場に脱水と血圧変動が重なりやすいと注意を呼びかけています。厚生労働省の資料でも、家庭内での転倒・転落は高齢者の要介護状態の主な原因のひとつとして挙げられており、夏の暑さが引き金になるケースは決して珍しくありません。
廊下・トイレ・浴室は特に転倒リスクが高い
自宅内での転倒は、廊下やトイレ、浴室の出入り口など、段差やわずかな滑りがある場所で起こりやすいことがわかっています。夜間にトイレへ向かう途中、暗い廊下でつまずいてしまうという声も多く聞かれます。
「危ないと思ってはいたけれど、まさか自宅で転ぶとは」と驚く家族も少なくありません。日中は元気そうに見えても、夜間や起床直後、入浴の前後は特にふらつきやすい時間帯です。慣れ親しんだ我が家だからこそ、油断しやすいという面もあります。
骨折から寝たきりにつながるリスク
高齢になると骨がもろくなっているため、転倒による骨折がそのまま入院や寝たきりのきっかけになることがあります。特に足の付け根(大腿骨頸部)の骨折は、その後の生活動作の自立度に大きく影響すると言われています。
入院をきっかけに筋力や意欲が低下し、そのまま要介護度が上がってしまうことも珍しくありません。転倒は一度きりの事故で終わらず、その後の生活全体に影響を及ぼす可能性があることを、家族としてしっかり理解しておきたいポイントです。
夏に増える高齢者の転倒事故|浴室・キッチンで今すぐできる対策でも紹介した通り、夏場の転倒対策は早めに備えておくことが大切です。
「うちはまだ元気だから大丈夫」と思っていても、暑さによる脱水は本人が自覚しにくいのが厄介なところです。こまめな水分補給と合わせて、住まいの中の危険箇所を見直すことが、夏場の転倒予防には欠かせません。
今日からできる手すり設置と家族の連携
今日からできること
まずは家の中を一緒に歩いてみて、お父さんやお母さんがどこで手をついているか、どこでふらついているかを確認しましょう。廊下やトイレの前など、実際に不安を感じている場所から手すりを検討するのが第一歩です。
「最近、朝トイレに行くときにふらつくことない?」と、責めるのではなく心配する気持ちで聞いてみると、本人も本音を話しやすくなります。賃貸住宅や大がかりな工事が難しい場合は、突っ張り式や吸盤式など工事不要のタイプから試してみるのもおすすめです。
まずは以下のポイントを一緒にチェックしてみてください。
- 廊下の壁づたいに歩いていないか
- トイレや浴室の出入り口で手をついていないか
- 夜間、暗い場所でつまずきそうになったことがないか
- 段差や滑りやすいマットが敷かれていないか
- 立ち上がるときに一瞬クラッとすることがないか
家族が連携してできること
手すりの設置場所や高さは、実際に使う本人の身長や動きに合わせることが大切です。「ここに手すりがあったら安心?」と聞きながら、一緒に位置を決めていきましょう。実際に手を伸ばしてもらい、無理なく握れる高さかどうかを確かめることも忘れずに行いたいところです。
工事を伴う手すり設置は、要介護認定を受けていれば介護保険の住宅改修費補助(原則1〜3割負担、上限20万円まで)を利用できる場合があります。申請には事前にケアマネジャーへの相談と、着工前の書類提出が必要になるため、工事を決める前のタイミングで動き出すことがポイントです。
詳しい申請方法は知らないと損する!高齢者が使える公的サービス・補助制度まとめで確認できるので、まずはケアマネジャーや地域包括支援センターに相談してみましょう。

なお、日常使いできるアイテムとしてこちらも参考にしてみてください。
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手すり設置でよくある失敗と注意点
手すりは「つけただけ」では十分に機能しないこともあります。よくある失敗例を知っておくことで、せっかくの対策を無駄にせずに済みます。
- 高さが本人の体格に合っておらず、かえって使いにくい
- 石膏ボードなど強度が足りない壁に直接ビス止めしてしまう
- 廊下だけ設置して、つまずきやすい浴室やトイレの対策を後回しにする
- 本人の意見を聞かずに家族だけで決めてしまい、結局使ってもらえない
- 介護保険の補助制度を知らず、費用面で工事をあきらめてしまう
特に壁の強度は見た目だけでは判断しづらいため、DIYで済ませようとせず、専門の施工業者に下地の確認を依頼すると安心です。せっかく設置した手すりがぐらついてしまっては、かえって転倒のきっかけになりかねません。
持病やふらつきの原因によっては、手すりの設置だけでなく歩行そのものの見直しが必要な場合もあります。めまいや立ちくらみが続くようであれば、自己判断せず必ずかかりつけ医にご相談ください。

まとめ
暑い季節は脱水や立ちくらみから、思わぬ場所での転倒事故が起こりやすくなります。まずは実家に帰ったときに、お父さんお母さんと一緒に廊下やトイレを歩いてみて、不安な場所を確認することから始めてみましょう。
手すりの設置は、大がかりな工事だけでなく、工事不要のアイテムから少しずつ始めることもできます。費用が気になる場合は、介護保険の住宅改修費補助が使えるかどうかを、まずはケアマネジャーに相談してみてください。
高齢の親が一人暮らしを続けるために家族ができることもあわせて参考にしながら、無理のない範囲で手すりの設置や住宅改修費補助の活用を検討し、家族みんなで安心できる住環境を整えていきましょう。
一度に完璧を目指す必要はありません。まずはトイレや廊下など、優先順位の高い一箇所から手をつけて、少しずつ住まい全体の安全性を高めていくことが、家族にとっても本人にとっても無理のない進め方です。


