「そろそろ非常食、買い替えなきゃ…」9月1日の防災の日が近づくと、実家の備蓄を思い出す方も多いのではないでしょうか。先日、久しぶりに実家の押し入れを開けたら、賞味期限が3年前に切れたアルファ米が出てきて青ざめた、という声も聞きます。
特に高齢の親がいる家庭では、備えるべき非常食は若い世代とは少し違います。硬い乾パンや味の濃いレトルト食品は、飲み込みにくさや持病への影響が心配になることもあるからです。この記事では、高齢の親のために選びたい非常食・備蓄品のポイントと、家族で今日からできる準備の工夫を紹介します。
特に一人暮らしの親であれば、誰かが気づいて声をかけてくれるとは限りません。備蓄の中身は、家族が「これなら大丈夫」と確認しておくことそのものが安心材料になります。
なぜ高齢者の非常食は「体に合うもの」を選ぶ必要があるのか
硬い・パサつく非常食は誤嚥・窒息のリスクに
災害時の非常食といえば乾パンやアルファ米を思い浮かべる方が多いですが、これらは硬さやパサつきがあり、噛む力や飲み込む力が落ちてきた高齢者には食べづらいことがあります。実際、避難所で配られた乾パンをそのまま食べられず、水分不足のまま過ごしてしまった高齢者がいたという報告もあります。
むせ込みや誤嚥が心配な方は、以前紹介したむせ・誤嚥のサインと対策も参考に、日頃から食べる力の変化を把握しておくと安心です。
持病や制限(塩分・水分制限、糖尿病など)への配慮
高血圧で減塩生活を送っている方、糖尿病で糖質量に気を配っている方など、持病によって食事制限がある高齢者は少なくありません。市販の非常食セットは味付けが濃いものも多く、備蓄する際は栄養成分表示を確認する一手間が欠かせません。
持病の管理について不安がある場合は、自己判断で備蓄内容を決めるのではなく、かかりつけ医に相談しながら調整することをおすすめします。
過去の災害でも指摘された高齢者の栄養課題
厚生労働省や自治体の報告でも、避難生活が長引くと高齢者の低栄養や脱水が課題になることが指摘されています。普段から「これなら食べられる」という非常食を家族で把握しておくことが、いざという時の安心につながります。
地域の避難所で用意される食事にも限りがある
自治体の避難所でも食事は用意されますが、初動では乾パンやビスケットなど、噛む力の弱い高齢者には食べづらいものが中心になりがちです。持病に合わせた個別対応まで手が回らない場合も多く、自宅からの持参分でしのぐ場面は珍しくありません。
今日からできる、親のための非常食・備蓄の選び方
やわらかい・食べ慣れた味を優先する
最近は缶入りのパンやレトルトのおかゆ、やわらかい煮込みタイプの非常食など、高齢者でも食べやすい商品が増えています。実際に一度試食してみて、「これなら美味しく食べられる」と本人が納得したものを備蓄するのがポイントです。
「お父さん、これ美味しかった?来年もこれにしようか」と話しながら選ぶと、防災の準備が家族の会話のきっかけにもなります。
常備薬・お薬手帳のコピーも忘れずに
非常食と合わせて見落としがちなのが、常備薬の備蓄です。以前紹介した服薬管理グッズと家族の工夫も参考に、最低でも3日分、できれば1週間分の薬とお薬手帳のコピーを非常持ち出し袋にまとめておくと安心です。
水は「1人1日3リットル」が目安、でも量だけでは不十分
非常食とあわせて欠かせないのが飲み水です。一般的には1人1日3リットル、最低3日分(できれば1週間分)が目安とされていますが、高齢者の場合は量だけでなく「飲みやすさ」も考えたいポイントです。
暑さや慣れない避難生活で水分を控えてしまう高齢者は少なくありません。ペットボトルのふたが開けにくい、コップに注ぐのが面倒といった小さな理由で、飲む量が減ってしまうこともあります。ストローボトルや軽量のカップを一緒に備えておくと、いざという時に負担なく水分をとりやすくなります。
「喉が渇いていなくても、少しずつでいいから飲んでね」と声をかけ合える関係を、備蓄品を選ぶ段階からつくっておくのも一つの工夫です。
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味に飽きず長く備蓄しやすい詰め合わせ
なお、非常食以外の備えも含めて防災リュックの中身を一度見直したい方は、以前まとめた防災リュックの中身もあわせてチェックしてみてください。
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家族で確認しておきたい注意点・よくある失敗
賞味期限切れの放置
一度備蓄すると安心してしまい、賞味期限の確認を忘れがちです。年に一度、防災の日や大晦日など決まったタイミングで中身をチェックする習慣をつけると管理しやすくなります。
期限が近づいたものは普段の食事に取り入れて消費し、新しいものと入れ替える「ローリングストック」を意識してみましょう。
量だけ揃えて味の確認をしていない
「とりあえず1週間分」と数だけ揃えて安心してしまうケースも見られます。実際の災害時に「これは食べられない」となっては備えの意味が薄れてしまいます。
年に一度、家族で試食する機会をつくり、本人の反応を確認しておくことをおすすめします。私自身、遠方に住む家族の備蓄を電話で確認するたび、「実際に食べてみたか」を聞くようにしています。
下記のチェックリストは、備蓄を見直す際のたたき台として活用してください。すべてを一度に揃えようとせず、できるところから少しずつ進めるだけでも十分です。
- 賞味期限は年1回まとめてチェック
- やわらかさ・味を実際に試食して確認
- 常備薬とお薬手帳のコピーも一緒に保管
- 塩分・糖質など持病に関わる表示を確認
本人の好み・アレルギーを確認せずに揃えてしまう
子ども世代が良かれと思って選んだ非常食が、実は親の苦手な味だった、というのもよくある失敗です。アレルギーの有無や、これまでの入院・療養で避けている食材がないかも、備蓄前に一度確認しておきましょう。
今年は「量」より「その人に合うか」で備えを見直そう
防災の日をきっかけに、まずは実家の非常食を1つ手に取ってみてください。賞味期限を確認しながら、「これ、お父さんは食べられそう?」と一緒に確認する時間そのものが、災害への備えになります。
なお、体調や持病について気になる点があれば、備蓄内容を決める前に一度かかりつけ医や地域包括支援センターに相談しておくとより安心です。今年は、量をそろえるだけで終わらない備蓄を目指してみませんか。
備蓄の中身を見直すことは、単なる防災対策以上に、親の今の食べる力や暮らしぶりを知る機会にもなります。年に一度のこの作業を、家族の様子を確かめる習慣にしていけたらと思います。
この記事の執筆者について
介護福祉の現場で22年以上、訪問介護や高齢者施設での勤務、自宅での家族介護を経験してきました。現在も遠方に暮らす高齢の家族がおり、「離れて暮らす家族を見守る」ことの難しさを実感者として日々感じています。本記事も、そうした現場と実生活の両方の経験をもとに執筆しています。
