先日、車いすで生活するお父さんを介護しているという読者の方から、「気づいたらお尻の皮膚が赤くなっていて、慌てて訪問看護師さんに相談した」というお話を伺いました。長時間同じ姿勢で座ったり寝たりしていると、体の同じ部分がずっと圧迫され続け、血の巡りが悪くなってしまいます。これがいわゆる「床ずれ(褥瘡)」の始まりです。今回は、床ずれがなぜ起きるのか、体圧分散マットレスやクッションの選び方、家族が日々の介護の中で気をつけたいポイントを、わかりやすくまとめました。
床ずれ(褥瘡)はなぜ起きるのか
同じ姿勢が続くことで起こる圧迫
床ずれは、骨が突き出た部分の皮膚が体重でずっと圧迫され続けることで血流が滞り、皮膚や皮下組織がダメージを受けてしまう状態です。車いすに座りっぱなしの時間が長かったり、ベッドで同じ向きのまま眠ってしまったりすると、お尻や仙骨、かかとなどの一部分に負担が集中しやすくなります。
例えば、80代で軽い脳梗塞の後遺症がある母のように、自分で体の向きを変えることが難しい場合は特に注意が必要です。日中はテレビの前の椅子に座ったまま、夜はベッドで同じ向きのまま眠ってしまう、というパターンが続くと、気づかないうちに同じ場所への圧迫が積み重なっていきます。
皮膚の弱まりと栄養状態の影響
高齢になると皮膚が薄く乾燥しやすくなり、ちょっとした摩擦でも傷つきやすくなります。加えて食事量が減って低栄養気味になっていると、皮膚の修復力そのものが落ちてしまいます。「最近、食が細くなったな」と感じている場合は、床ずれのできやすさにも影響している可能性があると知っておくとよいでしょう。
気づきにくい初期サインの見分け方
初期の床ずれは、皮膚が赤くなっている程度で強い痛みを訴えないことも多く、家族が気づかないまま進行してしまうケースが少なくありません。入浴やおむつ交換のタイミングで、お尻や腰、かかとの皮膚の色をさりげなく確認する習慣をつけておくと安心です。赤みが数時間たっても消えない場合は、自己判断で様子を見続けず、早めにかかりつけ医や訪問看護師に相談しましょう。念のため、スマートフォンで皮膚の状態を撮影して日付ごとに記録しておくと、次の受診の際に医師や看護師へ具体的な変化を伝えやすくなります。
衣替えの時期に注意したいこと
10月に入り厚手の服や寝具に替わるタイミングは、着崩れやシーツのしわで圧迫が一部分に偏りやすく、床ずれのリスクが一時的に高まりやすい季節でもあります。衣替えのついでに、寝具のしわを伸ばしたり、パジャマのタグやボタンが肌に当たっていないか確認する習慣をつけておくと安心です。
今日からできる予防と体圧分散グッズの選び方
体位変換の基本
一般的には2時間おきを目安に体の向きを変えることが推奨されていますが、実際に必要な頻度は皮膚の状態や介護の体制によって変わってくるため、担当のケアマネジャーや訪問看護師と相談しながら決めるのが安心です。「そろそろ向きを変えましょうか」と声をかけてから行うと、本人も心構えができて負担が少なくなります。
本人や家族だけで体位変換を続けるのが難しい場合は、福祉用具専門相談員に相談し、自動で体位を変える機能がついたエアマットレスを検討するという選択肢もあります。介護の負担を減らしながら床ずれ予防の質を保つための工夫として、知っておくとよいでしょう。
マットレス・クッション選びのポイント
体圧を一点に集中させないためには、体圧分散マットレスやクッションの活用が効果的です。選ぶ際は、本人の体格や自力で動ける程度、使う場所がベッドか車いすかに合わせて、通気性やカバーの洗いやすさも比較するとよいでしょう。介護保険の福祉用具貸与の対象になる製品もあるため、介護保険の申請方法を確認しながらケアマネジャーに相談すると、費用を抑えられる場合があります。
私自身、訪問介護の現場で、あるご家族が「柔らかい布団を重ねているから大丈夫」と思い込んでいたケースに出会ったことがあります。実際には体が沈み込みすぎて、別の場所に圧力が集中してしまっていました。体圧分散グッズは、やわらかさだけで選ぶものではないと実感した出来事です。
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ムレにくく体圧を分散し床ずれ予防をサポート
車いすでの外出が多いご家庭では、こうした車椅子の選び方の見直しとあわせて、座面のクッションも定期的に点検しておくと安心です。移乗の際に皮膚がこすれることも床ずれの原因になるため、移乗介助の工夫も一緒に見直しておくとよいでしょう。
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注意点・よくある失敗
「柔らかければいい」わけではない
柔らかすぎるマットレスは体が沈み込みすぎて、かえって特定の部位に圧力が集中してしまうことがあります。製品によって適した使い方が異なるため、購入前に本人の体格や使用シーン(ベッドか車いすか、自力で動けるかどうか)を踏まえて選ぶことが大切です。可能であれば、レンタルやお試し利用ができる商品を選ぶと、実際に使ってから本格的な導入を検討できて安心です。
家族で確認しておきたいチェックポイント
- お尻・仙骨・かかとなど、骨が出っ張っている部分に赤みやすり傷がないか
- 同じ姿勢のまま2時間以上過ごしていないか
- マットレスや座面のクッションがへたっていないか
- 食事量や水分摂取量が極端に減っていないか
スキンケアと栄養もセットで考える
体圧分散グッズだけに頼らず、皮膚の乾燥や摩擦を防ぐ保湿ケア、たんぱく質を意識した食事もあわせて行うことで、床ずれのリスクを下げやすくなります。遠方に住む私の場合、電話で「お尻や腰のあたり、赤くなっているところはない?」と直接尋ねるのは気が引けて、「最近お風呂はゆっくり入れてる?」というような聞き方で、さりげなく皮膚の状態を確認するようにしています。
床ずれはいったんできてしまうと治りにくく、悪化すると入院が必要になることもあります。本記事は一般的な予防の考え方をまとめた情報であり、すでに皮膚の異常が見られる場合や治療が必要かどうかの判断は、自己判断せず、かかりつけ医や訪問看護師、地域包括支援センターに早めに相談してください。
小さな変化に気づくことが、いちばんの予防になる
先日、「お母さん、座り方変えてみようか」と声をかけながら一緒にクッションの位置を直しただけで、本人が「なんだか座り心地がいいね」と笑顔を見せてくれたという話を聞きました。大掛かりな対策でなくても、ちょっとした声かけと工夫の積み重ねが、床ずれを防ぐいちばんの近道になります。
床ずれは「気づいたときにはもう進行していた」ということが少なくない問題です。マットレスやクッションを整えることも大切ですが、それ以上に、日々の介護の中でお父さんお母さんの肌の様子をちらっと確認する習慣そのものが、いちばんの予防につながります。今日、着替えやおむつ交換のついでに、皮膚の色を一度見てみませんか。
この記事の執筆者について
介護福祉の現場で22年以上、訪問介護や高齢者施設での勤務、自宅での家族介護を経験してきました。現在も遠方に暮らす高齢の家族がおり、「離れて暮らす家族を見守る」ことの難しさを実感者として日々感じています。本記事も、そうした現場と実生活の両方の経験をもとに執筆しています。
