親がデイサービスを嫌がる時|見学・体験の進め方と持ち物

シルバーウィークで久しぶりに実家に泊まってみたら、お母さんが朝から夕方までほとんど同じ椅子に座って、テレビを眺めていた。そんな光景に、胸がざわついた方もいるのではないでしょうか。

「話し相手が家族以外にいないのかもしれない」「このまま家にこもりきりで大丈夫だろうか」と気になって、思い切って「デイサービスに行ってみない?」と切り出したところ、「私は行かない。あんなところは年寄りが行く場所でしょう」ときっぱり断られてしまった。そんな経験をされた方も少なくありません。

この記事では、デイサービスを嫌がる親御さんの気持ちを整理したうえで、見学・体験利用の進め方、声かけの例、初日の持ち物までをお伝えします。無理に説得するのではなく、「まず見てみる」ところから一緒に考えていきましょう。私は介護福祉の現場に22年ほどいましたが、最初の一歩の踏み出し方で、その後の印象が大きく変わることを何度も見てきました。

笑顔で過ごす高齢の女性
笑顔で過ごせる場所を探す

親が「行きたくない」と言う本当の理由

デイサービス(通所介護)は、自宅から送迎車で事業所に通い、食事や入浴、体操やレクリエーションなどを日帰りで利用できる介護保険のサービスです。利用する本人にとっては外に出る機会になり、家族にとっては介護から少し離れて休める時間にもなります。それでも親御さんが乗り気にならないのには、それぞれ理由があります。

「年寄り扱い」されたくない気持ち

「まだ自分のことは自分でできる」という自負が強いほど、デイサービスという言葉は「介護される側になった」という宣告のように聞こえます。長年一家を支えてきた世代の父親や、家事を切り盛りしてきた母親ほど、その傾向は強く出がちです。

断られたときは「わがまま」と受け取らず、「自分の力を認めてほしい」というサインだと考えてみてください。そう捉えるだけで、こちらの言葉選びが変わってきます。

知らない場所・知らない人への不安

80代になってから新しい人間関係をつくるのは、想像以上にエネルギーが要ります。「何をするのか分からない」「輪に入れなかったらどうしよう」「トイレは大丈夫だろうか」といった不安は、初めての場所に行く人なら誰でも抱くものです。

施設で働いていた頃、初日は玄関で「やっぱり帰る」と言っていた方が、数回通ううちに顔なじみができて、自分から支度を始めるようになる場面を何度も見ました。最初の不安は、通ううちにやわらぐことが多いものです。ただし個人差はあり、合う・合わないがあるのも事実です。

家族には言いにくい本音

本当の理由が「お風呂で人に体を見られたくない」「お金がかかるのが心配」「留守にする家のことが気になる」といった、口に出しにくいことの場合もあります。

理由をはっきり言わない親御さんには、「何が一番心配?」と聞くより、「もし行くとしたら、どんなことが気になりそう?」と仮定の形でたずねるほうが、本音を話してもらいやすくなります。

断られにくい進め方|見学から体験まで

まずはケアマネジャーに相談する

すでに要介護認定を受けている場合は、担当のケアマネジャー(介護支援専門員)に相談するのが最初の一歩です。親御さんの性格や好み、体の状態を伝えれば、合いそうな事業所を候補として挙げてもらえます。

まだ認定を受けていない場合は、お住まいの地域包括支援センターや市区町村の窓口が相談先になります。申請の流れは、介護保険の申請方法|要介護認定までの流れと準備で詳しく紹介しています。なお、要支援の認定を受けている方は、自治体ごとに内容が異なる介護予防の通所サービスを使う形になるため、窓口で確認してください。

自己負担は所得に応じて1〜3割で、食事代などは別にかかります。費用のイメージも早めにケアマネジャーへ聞いておくと、親御さんへ説明しやすくなります。

見学で家族が見ておきたいこと

事業所は、家族の目で一度見ておくことをおすすめします。パンフレットの印象と実際の雰囲気は、意外と違うものです。厚生労働省の「介護サービス情報公表システム」でも、事業所の基本情報を事前に調べられます。

見学のときは、次のような点を意識してみてください。

  • 職員が利用者に話しかけるときの言葉づかいや表情
  • 一日の過ごし方(体操・レクリエーション・自由時間の割合)
  • 入浴や排せつの場面での、プライバシーへの配慮
  • 男性や、大勢の場が苦手な人が過ごしやすい雰囲気か
  • 送迎の時間帯と、家族が留守のときの対応

立派な設備よりも、職員が利用者の名前を呼んで話しかけているかどうかのほうが、親御さんが通い続けられるかに直結する。私は現場での経験から、そう感じています。

遠方に暮らしていて見学に付き添えない場合は、ケアマネジャーに様子を聞いたり、電話やオンラインで事業所と話したりする方法もあります。遠くの家族を思う立場として、その歯がゆさはよく分かります。連絡や費用の考え方は、遠距離介護の始め方|連絡・費用・緊急時の備え方も参考になるはずです。

最初は短い「お試し」から

多くの事業所では体験利用を受け付けていて、半日だけ、食事の時間だけといった形で試せる場合もあります(対応は事業所によって異なります)。「契約する前に一度だけ」と伝えると、親御さんも「断れない話」ではなく「試してみる話」として聞きやすくなります。

体験のあとに「どうだった?」と感想を問いただすのは、少し待ちましょう。まずは「お疲れさま、疲れたでしょう」とねぎらうのが先です。「悪くなかった」の一言が聞けたら、それだけで十分な成果です。

親に伝える声かけの例

言葉の選び方ひとつで、返ってくる反応は変わります。たとえば、こんなやりとりです。

「デイサービスに行ってみない?」
「行かない。私はまだ元気だから。」
「そうだよね、お母さんは元気だと思う。だからこそ、体を動かしたり人と話したりする場所を、一度試してみない? 合わなければやめていいから、一回だけ付き合って。」

「私が楽になるから行って」と、介護する側の都合を前面に出すと、親御さんは「迷惑をかけている」と感じてしまいます。かわりに「お父さんのこれまでの仕事の話、向こうの人にも聞かせてあげたら喜ばれると思うよ」と、経験を頼りにする形で誘うと、「世話される」ではなく「役に立つ」立場として足を運びやすくなります。

「合わなければやめればいいだけだから」と、断る自由が残っていることも忘れずに伝えてください。気持ちの逃げ道があるだけで、初日の緊張はずいぶん軽くなります。

初日の持ち物と名前つけ

持ち物は事業所ごとに決まっているので、体験の前に必ず確認しておきましょう。一般的には、連絡帳、着替え、タオル、上履きや靴、飲み物などが挙げられます。入浴のある日は、替えの下着も多めに用意しておくと安心です。

普段の服薬や持病について事業所に伝えておきたいことがある場合は、自己判断で決めず、必ずかかりつけ医やケアマネジャーにご相談ください。

高齢者に寄り添う介護の手
そっと寄り添う支えの手

入浴の日は、衣類やタオルの取り違えが起きやすいものです。持ち物すべてに名前を付けておくと、親御さんも家族も安心できます。なお、名前つけに使えるアイテムとして、こちらも参考にしてみてください。

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こんなときは焦らない|よくある失敗

デイサービスの話は、家族が焦るほどうまく進まないものです。よくある失敗を先に知っておくだけでも、気持ちに余裕が生まれます。

家族と過ごす穏やかな高齢の女性
家族との時間をゆったりと

説得を重ねて関係がこじれる

「行ってほしい」と何度も迫ると、親御さんが心を閉ざしてしまうことがあります。断られたら、いったん引いて日を置きましょう。連休中に結論を出そうと急ぐ必要はありません。

一度の体験で「合わない」と決めつける

初回は緊張して疲れてしまうため、どうしても印象が悪くなりがちです。数回通ってみる、別の事業所も見てみる、といった余地を残しておきましょう。体を動かすことに力を入れた事業所や、少人数でゆったり過ごせる事業所など、特色はさまざまです。

「外に出たがらない」の背景を見落とす

外出を嫌がる背景に、体調の変化や、足腰の衰えへの不安が隠れていることもあります。足腰が気になる場合は、残暑で弱る親の足腰|フレイル予防チェックと対策も読んでみてください。

ただし、様子を見ただけで原因を判断することはできません。気になる変化が続くときは、かかりつけ医や地域包括支援センターへ相談してください。この記事は一般的な情報提供であり、個別の診断や判断の代わりにはなりません。

連休明けの最初の平日に、電話を一本

今回のシルバーウィークで感じた「あれ?」は、親御さんからの小さなサインかもしれませんし、たまたまの休日の過ごし方かもしれません。どちらなのかは、家族だけで抱え込んでいても答えが出ません。

デイサービスは、親御さんの「行き場」を増やすための選択肢であり、同時に、家族が一人で背負い込まないための手段でもあります。連休が明けたら、最初の平日にケアマネジャーか地域包括支援センターへ電話をして、「まずは見学だけしたい」と伝えてみてください。その一本の電話で、親子の次の一歩は動き出します。


この記事の執筆者について

介護福祉の現場で22年以上、訪問介護や高齢者施設での勤務、自宅での家族介護を経験してきました。現在も遠方に暮らす高齢の家族がおり、「離れて暮らす家族を見守る」ことの難しさを実感者として日々感じています。本記事も、そうした現場と実生活の両方の経験をもとに執筆しています。

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