夜中にふと物音で目が覚め、様子を見に行くと、廊下でお父さんがうずくまっていた——そんな経験をした方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「トイレに行こうとして、暗い廊下でよろけてしまった」「最近、夜中に何度もトイレに起きているみたい」という話は、高齢の親をもつご家族からよく耳にする悩みです。夜間のトイレ移動は、日中に比べて転倒のリスクがぐっと高まる時間帯だといわれています。
この記事では、なぜ夜間にトイレでの転倒が増えるのか、その理由を整理したうえで、今日からご家庭でできる具体的な対策を、ポータブルトイレや便利グッズの選び方とあわせてご紹介します。

なぜ夜間のトイレ移動で転倒が増えるのか
加齢による夜間頻尿の増加
年齢を重ねると、腎機能の変化やホルモンバランスの影響で、夜間に何度もトイレに起きる「夜間頻尿」が増える傾向にあります。国立長寿医療研究センターによると、夜間頻尿は高齢者に非常に多くみられる症状のひとつとされています。
一晩に何度もベッドとトイレを往復することになれば、それだけ転倒の機会も増えてしまいます。「トイレが近いのは仕方ない」と思われがちですが、実は対策できることがたくさんあります。
特に真夏は寝苦しさで眠りが浅くなりがちで、ちょっとした物音でも目が覚めやすい時期です。だからこそ、この時期にあわせて夜間の安全対策を見直しておくことをおすすめします。
暗い中での移動と視力低下・寝ぼけ
夜中に目覚めた直後は、頭がまだしっかり覚醒しておらず、いわゆる「寝ぼけ」の状態になりがちです。加えて、暗い部屋の中では若い頃よりも視力の低下がはっきり影響し、家具の角や敷居の段差に気づきにくくなります。
普段は慣れているはずの自宅の廊下でも、真っ暗な中では思わぬところでつまずいてしまうものです。「うちは大丈夫」と思っていても、暗闇と寝ぼけが重なると誰にでも起こりうることだと考えておきましょう。
熱中症予防の水分補給が招く落とし穴
夏場は熱中症を防ぐために、こまめな水分補給を心がけているご家庭も多いはずです。ただし、就寝前にたくさん水分をとると、その分だけ夜間のトイレの回数が増えてしまうという側面もあります。経口補水液の選び方と飲ませ方の記事でもご紹介した通り、水分補給自体は熱中症対策としてとても大切です。
大切なのは「いつ」「どのくらい」飲むかのバランスです。日中はしっかり水分をとり、就寝の1〜2時間前からは飲みすぎないよう調整するだけでも、夜間のトイレ回数を減らせることがあります。
「うちの親は大丈夫」と油断していると、思わぬところで事故につながります。実際に、夜間のトイレでの転倒がきっかけで骨折し、そのまま入院・介護が必要になったというケースも珍しくありません。日中は元気に歩けている方でも、夜間は別の話だと考えておく必要があります。
今日からできる転倒対策
寝室にポータブルトイレを置く
トイレまでの距離そのものを短くしてしまうのが、最もシンプルで効果的な対策です。寝室のすぐそばにポータブルトイレを置いておけば、暗い廊下や階段を歩く回数そのものを減らせます。
「ポータブルトイレはまだ早いのでは」と感じるご家族も多いのですが、常に使うためではなく、体調が悪い夜や真冬・真夏の移動が大変な時期だけ使う、という考え方でも十分です。使用後は消臭剤つきのものを選ぶと、においが気になりにくくなります。
足元を照らすセンサーライトと吸収パッドの活用
廊下やトイレまでの動線に、人感センサー付きのライトを設置しておくと、電気のスイッチを探す手間がなくなり、暗闇での移動が格段に安全になります。まぶしすぎない足元灯タイプを選ぶと、目が覚めすぎず再び眠りにつきやすいというメリットもあります。
また、尿とりパッドを併用すれば、万が一トイレに間に合わなかった場合でも下着や寝具を守ることができ、本人の「失敗したらどうしよう」という不安をやわらげることにもつながります。
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寝室のそばに置ける介護用トイレです
ポータブルトイレを選ぶ際は、置き場所のスペースに合うサイズかどうか、立ち上がりやすい高さかどうか、そしてお手入れのしやすさをチェックしておくと、長く安心して使い続けられます。座面に手すりが付いているタイプなら、立ち座りの負担も軽くなります。
なお、夜間だけ使う吸収パッドとしてこちらも参考にしてみてください。
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夜間の一枚でしっかり吸収してくれます
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暗い廊下やトイレまでの道を照らします
家族で見守る声かけの工夫
「夜、トイレに行くとき危なくない?」と直接聞くと、本人が身構えてしまうこともあります。「私も最近夜中に何度も起きちゃって。お母さんはどう?」というように、自分の話も交えながら聞いてみると、素直に答えてもらいやすくなります。
- 寝室からトイレまでの動線に物を置きっぱなしにしていないか確認する
- スリッパが滑りやすくなっていないかチェックする
- 「夜中に起きたら電気をつけてから歩いてね」と具体的に伝える

注意点・よくある失敗
ポータブルトイレを用意しても、本人が「まだそこまでしなくても」と使うことを嫌がるケースは少なくありません。無理強いせず、「念のため」「体調が悪い日だけ」といった形で、あくまで選択肢のひとつとして置いておくことが大切です。
また、トイレ自体の環境を見直すことも忘れないようにしましょう。浴室・キッチンでの転倒防止対策や室内手すりの取り付けもあわせて行うことで、夜間だけでなく日中の移動もより安全になります。介護保険の住宅改修費補助が使える場合もあるため、気になる方はケアマネジャーに相談してみてください。
もうひとつ注意したいのが、夜間頻尿が単なる加齢によるものではなく、糖尿病や心臓・腎臓の病気、前立腺の病気などが背景にある場合もあるという点です。急に回数が増えた、痛みや血尿などの症状がある場合は、自己判断せず必ずかかりつけ医にご相談ください。
対策を始めるときは、一度にすべてを揃えようとせず、まずは足元の照明や動線の片付けなど、費用をかけずにできることから着手するのがおすすめです。
- 寝室からトイレまでの通路に段差やコード類がないか確認する
- 夜間だけでも使えるように、ポータブルトイレの設置場所を事前に相談しておく
- 本人が使いたがらない場合は理由を聞き、無理強いしない
- 症状が急に変化したときは早めにかかりつけ医へ相談する

まとめ
夜間のトイレ移動での転倒は、暗さ・寝ぼけ・夜間頻尿という複数の要因が重なって起こります。ポータブルトイレや尿とりパッド、足元センサーライトなど、今日から取り入れられる工夫はたくさんあります。
まずは今夜、実家の廊下やトイレまでの道のりを実際に歩いてみて、暗い場所や足元が危ない場所がないか確認するところから始めてみませんか。小さな備えの積み重ねが、大きな事故を防ぐ一歩になります。
