台風の断水に備える|高齢の親のための簡易トイレの選び方

「台風が来るたびに、断水になったらどうしよう」——80代で一人暮らしを続ける実家の母が、電話口でそうつぶやくのを聞いて、はっとした方もいるのではないでしょうか。8月から9月にかけての台風シーズンは、停電対策として懐中電灯やモバイルバッテリーを準備している家庭は増えていますが、意外と見落とされがちなのが「断水したときのトイレ」の問題です。水道が止まると水洗トイレが流せなくなり、特に足腰が弱っていたり、頻繁にトイレへ行く高齢の親にとっては大きな不安要素になります。この記事では、いざというときに親が安心して使える携帯トイレ・簡易トイレの選び方と、家族が事前にできる備えについて、具体的にご紹介します。

この記事では、断水時にトイレで困らないための携帯トイレ・簡易トイレの選び方、今日から始められる備蓄のコツ、そして家族が無理なくできる声かけの工夫について、具体的な会話例を交えてお伝えします。大がかりな工事や特別な準備は必要ありません。まずは知っておくだけでも、いざというときの不安がぐっと軽くなります。

断水に備えて備蓄された飲料水のペットボトル
断水時は飲料水の確保も重要

断水でトイレが使えなくなると何が起きるのか

台風や豪雨による断水は、数時間で復旧することもあれば、数日間続くこともあります。水道が止まると水洗トイレは流せなくなり、特に一人暮らしの高齢者にとっては「我慢する」「水分を控える」といった行動につながりやすく、脱水や体調不良のリスクを高めてしまいます。

水分を我慢して体調を崩す高齢者が少なくない

「トイレに行けないなら、水を飲むのを控えよう」と考える高齢者は少なくありません。しかし厚生労働省は熱中症予防の観点からこまめな水分補給の重要性を呼びかけており、断水を理由に水分を控えることは、この呼びかけとは逆行する行動になってしまいます。経口補水液の記事でも触れていますが、我慢するのではなく「トイレの心配をなくす」ことが根本的な対策になります。

しゃがむ動作の負担も見逃せない

断水時に使う簡易トイレの中には、しゃがんで使うタイプもあります。足腰が弱っている高齢の親には、便座やフレームのある「腰かけて使えるタイプ」の方が安全で負担が少なく、転倒のリスクも減らせます。

夜間・停電が重なるとさらに不安が増す

台風は夜間に接近することも多く、停電と断水が重なると、暗い中で慣れない場所まで移動するのは危険です。「寝室の近くに簡易トイレを置いておく」だけでも、親の不安と転倒リスクをぐっと減らすことができます。

断水はどのくらい続くのか

台風や豪雨による断水は、地域や被害状況によって数時間で復旧する場合もあれば、配管の修理に数日〜1週間程度かかることもあります。自治体は各家庭に対して、飲料水だけでなく生活用水についても数日分の備蓄を呼びかけています。トイレの備えも、この「数日分」を目安に考えておくと安心です。

また、断水中は手洗いもままならなくなるため、ウェットティッシュや除菌シートを合わせて備えておくと、衛生面での不安も和らげることができます。

「うちの実家は高台にあるから大丈夫」と思っていても、断水は浸水の有無に関係なく、配管や浄水施設の被害によって広い範囲で発生することがあります。地域を問わず、備えておくに越したことはありません。

今日から備えられる携帯トイレ・簡易トイレの選び方

簡易トイレには「便座やフレームがある据え置きタイプ」と「袋と凝固剤だけの携帯タイプ」があります。実家の親に備える場合は、この2種類を組み合わせて用意しておくのが安心です。

今日からできること

  • 普段使っている洋式トイレにかぶせて使える「便座設置タイプ」を1つ用意する
  • 凝固剤付きの携帯トイレ袋を、家族の人数×3〜5回分ストックしておく
  • 寝室やリビングなど、夜間でも移動しやすい場所に保管場所を決めておく
  • 使い方を一度、親と一緒に試してみて手順を確認しておく

家族が連携してできること

「もし断水したらどうする?」と聞くと、親は「大丈夫、なんとかなる」と答えがちです。そこで「簡易トイレ、一緒に置き場所だけ決めておこうか」と具体的な行動を提案すると、話が進みやすくなります。台風が接近する前に家族で電話をして、備蓄の残数を確認する習慣をつけておくのもおすすめです。

会話例:さりげなく備えを提案する

「うちも台風のとき断水したことあってさ、簡易トイレ買っておいたら助かったよ」というように、自分の話として切り出すと、親も身構えずに話を聞いてくれることが多いです。「お母さんも1つ置いておこうか」と自然に誘ってみましょう。

電話で伝えるだけでは実感が湧きにくいものです。次の帰省時に一緒に段ボール箱を開けて、実際に使い方を確認しながら「ここに置いておくね」と場所を決めると、親も家族も安心感が違います。

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凝固剤付きの携帯トイレ袋は消耗品のため、多めにストックしておくと安心です。

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実は私自身、昨年の台風シーズンに、遠方に暮らす実家が3日間の断水を経験しました。母から「トイレは近所の銭湯を借りている」と電話で聞いたときは、正直かなり焦りました。あのとき簡易トイレさえ用意していれば、母ももっと落ち着いて過ごせたはずだと、今でも思い返します。

備えを「使えるもの」にしておくための工夫

簡易トイレを準備しても、いざというときに使えなければ意味がありません。備蓄量の計算方法と、よくある失敗例を確認しておきましょう。

備蓄量と保管場所を決めておく

  • 簡易トイレの使用回数と、家族の人数・日数を掛け合わせて必要数を計算する
  • 凝固剤には使用期限があるものが多いため、パッケージの表示を確認する
  • においが気になる場合は、防臭性の高い密閉袋も一緒に用意しておく
  • 車椅子や杖を使っている場合は、便座の高さや安定性も確認しておく

よくある失敗と対策

  • 使用期限切れの凝固剤を放置していた→年に1回、台風シーズン前に中身を確認する
  • 収納場所を親しか知らず、家族が緊急時に見つけられなかった→家族間で保管場所を共有しておく
  • 普段使わないため、いざというときに使い方が分からなかった→事前に一度試しておく

本記事でご紹介する備えは、あくまで一般的な情報の一例です。持病があり通院中の親の場合、断水時の水分・食事管理は体調によって適した対応が異なるため、かかりつけ医や地域包括支援センターに相談しながら進めることをおすすめします。停電対策の記事と合わせて備えておくと、災害時の安心感がぐっと高まります。

ストックされたトイレットペーパー
日用品の備蓄も忘れずに

まとめ

断水がいつ起こるか、どのくらい続くかは誰にも予測できません。だからこそ、事前に「トイレをどうするか」を家族で共有しておくことが、離れて暮らす家族にとっても大きな安心材料になります。簡易トイレは一度用意してしまえば、数年間そのまま保管できるものがほとんどです。備えたこと自体を忘れてしまうくらいで、ちょうどよいのかもしれません。

次に実家へ電話をかけるとき、天気の話のついでに「簡易トイレ、うちにも一つ置いてあるよ」と一言添えてみてください。身構えさせない一言が、いざというときの安心につながります。台風時の防災リュックや夜間のトイレ対策もあわせて確認しておくと、次の台風シーズンをより安心して迎えられます。


この記事の執筆者について

介護福祉の現場で22年以上、訪問介護や高齢者施設での勤務、自宅での家族介護を経験してきました。現在も遠方に暮らす高齢の家族がおり、「離れて暮らす家族を見守る」ことの難しさを実感者として日々感じています。本記事も、そうした現場と実生活の両方の経験をもとに執筆しています。

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