9月に入っても厳しい残暑が続くなか、先日実家に電話をかけたら、「暑いけど扇風機で十分だから」とお父さんがエアコンをつけずに過ごしていることが分かり、思わず声が大きくなってしまった方も多いのではないでしょうか。電気代への不安や、冷房の風が苦手という理由から、真夏はもちろん残暑の時期まで長くエアコンを我慢してしまう高齢者は少なくありません。
加齢によって体温調節機能や暑さを感じる感覚が低下していると、本人が「大丈夫」と思っていても、室内にいながら熱中症になってしまう危険があります。この記事では、親がエアコンを我慢してしまう理由を整理したうえで、室内の暑さを「見える化」し、離れて暮らす家族でも見守れる温湿度計やスマートリモコンの選び方、今日から実践できる声かけの工夫をご紹介します。

なぜ親はエアコンを我慢してしまうのか
電気代への不安
「電気代がもったいないから」という理由でエアコンの使用を控える高齢者は非常に多く見られます。年金生活で収入が限られている中、目に見えて増える電気代への不安は本人にとって切実な問題です。しかし熱中症で救急搬送されれば医療費や家族の負担ははるかに大きくなるため、まずは「我慢することの方が損である」という事実を家族から伝えることが大切です。
実際には、エアコンを1日8時間ほど稼働させても、電気代は1ヶ月あたり数千円程度に収まるケースがほとんどです。一方で熱中症による救急搬送や入院となれば、医療費だけでなく、家族が仕事を休んで駆けつける負担も発生します。訪問介護の現場でも、電気代を切り詰めた結果かえって体調を崩し、医療費がかさんでしまったご家庭を何度も見てきました。具体的な金額を示しながら話し合ってみましょう。
冷房の冷えすぎ・体調不良への不安
「エアコンをつけると体が冷えて関節が痛くなる」「冷風が直接当たると具合が悪くなる」といった経験から、冷房そのものに苦手意識を持つ親御さんも少なくありません。この場合は設定温度を28度前後にする、風向きを壁や天井に向ける、除湿運転を活用するなど、体への負担を減らす使い方を一緒に確認してあげましょう。長袖の羽織りものを近くに置いておくのもおすすめです。
「暑さを感じにくい」高齢者特有の事情
加齢により汗腺の働きや皮膚感覚が鈍くなると、実際の室温が高くても本人は「そこまで暑くない」と感じてしまうことがあります。これは本人の判断力の問題ではなく、加齢に伴う生理的な変化です。国立長寿医療研究センターも、高齢者は暑さやのどの渇きを自覚しにくく、症状が進んでから気づくケースが多いと注意を呼びかけています。厚生労働省も夏季の熱中症予防として、室温をこまめに確認し我慢せずに冷房を使うよう呼びかけており、感覚だけに頼らない対策が推奨されています。
「暑くないから大丈夫」という言葉を鵜呑みにせず、室温そのものを客観的な数値で確認する仕組みが必要です。熱中症全般への基本的な対策については、高齢者の熱中症対策2026年版|症状・予防・応急処置を徹底解説もあわせてご確認ください。
見落としがちな「残暑」の危険性
台風シーズンと蒸し暑さが重なる時期
9月に入ると気温のピークは過ぎたように感じられますが、湿度が高い日や台風接近時の蒸し暑さは真夏に劣らない負担を体に与えます。熱中症による救急搬送は8月だけでなく9月中旬まで一定数続くとされ、「もう涼しくなってきたから」とエアコンを止めてしまう時期こそ注意が必要です。
一人暮らしの母に電話するたびに感じること
私自身、遠方で一人暮らしをする母に電話をするとき、季節の変わり目ほど「今日は涼しいから大丈夫」という言葉をそのまま信じないようにしています。声の調子や部屋の様子を尋ね、温湿度計の数字を必ず聞くようにしてから、思わぬ体調不良に気づけたことが何度かありました。残暑が続くこの時期こそ、家族からの一言が命を守るきっかけになります。
残暑で体力が落ちやすい時期は、足腰の衰えにも注意が必要です。残暑で弱る親の足腰|フレイル予防チェックと対策もあわせてご確認いただくと、季節の変化に伴う体調管理の参考になります。
室内の暑さを「見える化」する対策
今日からできる声かけと工夫
「暑いと感じなくても、部屋の温度が高いと体には負担がかかっているんだよ」というように、感覚ではなく数値で伝える声かけが効果的です。たとえば「今日は温湿度計が31度を示していたから、少しエアコンをつけてみようか」と具体的な数字を交えて話すと、本人も納得しやすくなります。
また、電話越しに「お母さん、そっちは今何度? うちのアプリで見たら30度超えてたよ」と先に情報を伝える聞き方も、本人の警戒心を和らげます。声かけの工夫については高齢者の熱中症対策2026年版|症状・予防・応急処置を徹底解説でも詳しく紹介していますので、参考にしてみてください。また電気代への不安には、先月の電気代を一緒に確認し、熱中症で入院するより安く済むことを具体的な数字で説明するのも有効です。
- 室温が28度、湿度が60%を超えたら冷房を使う目安にする
- エアコンの設定温度は28度前後、風向きは壁や天井向けにする
- 1日に何度か決まった時間に室温をチェックする習慣をつける
- 「暑くない」という本人の言葉より温湿度計の数字を優先する
家族が離れていてもできる見守り
最近は、室温や湿度をひと目で確認できるアラーム付きの熱中症計・温湿度計や、外出先からスマートフォンでエアコンを操作できるスマートリモコンが、手頃な価格で手に入るようになりました。温湿度計を親のリビングに置いておけば、本人が数値を見て自分で判断する助けになりますし、スマートリモコンがあれば「今日は暑くなりそうだから」と家族が離れた場所から先にエアコンをつけておくこともできます。特に一人暮らしの親御さんの場合、こうした「見える化」の仕組みは大きな安心材料になります。夜間のエアコン活用については親の熱帯夜対策|安眠を守る冷却寝具の選び方も参考になります。
温湿度計を選ぶ際は、数字が大きく表示されて離れた場所からでも見やすいもの、暑さや湿度が一定の基準を超えるとアラームで知らせてくれるものを選ぶと、うっかり見落とすことを防げます。スマートリモコンについても、初めて使う高齢者にとっては操作が複雑に感じられることがあるため、家族が一度設定を済ませておき、本人は普段どおりリモコンやスイッチを使うだけで済むようにしておくと導入がスムーズです。
なお、日常使いできるアイテムとしてこちらも参考にしてみてください。
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室温を数値で確認でき、我慢しがちな親への声かけに役立ちます
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注意点・よくある失敗
エアコンを我慢する親への声かけでは、いくつか気をつけたいポイントがあります。良かれと思った行動が、かえって反発を招いてしまうこともあるため、進め方を少し工夫してみましょう。
- 頭ごなしに「エアコンをつけて」と言うだけでは反発されやすい。数値や具体例を示しながら一緒に考える姿勢が大切
- 温湿度計を置いても、目につきにくい場所だと確認する習慣がつかない。リビングやよく座る場所の近くに置く
- スマートリモコンは便利だが、本人が「勝手に操作された」と感じないよう、事前に使い方を説明し了承を得ておく
- 冷房を我慢する背景に「一人で決めるのが不安」という気持ちが隠れていることもあるため、電話やビデオ通話で会話を増やすことも忘れずに
会話の際は「お父さん、今日温湿度計見たら30度超えてたよ。無理しないで、少しだけでもエアコンつけてみない?」というように、事実と提案をセットで伝えると受け入れられやすくなります。頭ごなしの指示ではなく、一緒に確認するという姿勢を意識してみてください。
なお、めまいや頭痛、吐き気などの体調の変化を感じた場合は自己判断せず、必ずかかりつけ医にご相談ください。特に持病のある方や、すでに水分をあまり摂れていない様子が見られる場合は、早めの受診が安心につながります。本記事で紹介している内容はあくまで一般的な情報提供であり、個別の症状に対する診断や治療に代わるものではない点にもご留意ください。

まとめ
親がエアコンを我慢してしまうのは、電気代への不安や体感の変化など、本人なりの理由があります。頭ごなしに注意するのではなく、温湿度計やスマートリモコンで室内の暑さを「見える化」し、数字を根拠に会話することで、無理なく行動を変えていくことができます。
残暑が長引く年ほど、季節の切り替わりに気づかず我慢を続けてしまう親は多いものです。今度実家に電話をするときは、天気の話のついでに「そっちの部屋、今何度?」と聞いてみてください。その何気ない一言が、離れて暮らす親の暑さへの意識を変える最初のきっかけになるはずです。
この記事の執筆者について
介護福祉の現場で22年以上、訪問介護や高齢者施設での勤務、自宅での家族介護を経験してきました。現在も遠方に暮らす高齢の家族がおり、「離れて暮らす家族を見守る」ことの難しさを実感者として日々感じています。本記事も、そうした現場と実生活の両方の経験をもとに執筆しています。
