年末年始に実家に帰ると、同居しながらお父さんの介護をしているお母さんの顔がすっかりやつれていて、言葉が出なかった――という方も少なくないのではないでしょうか。「大丈夫、まだ頑張れる」と口では言っていても、表情や口数の減り方に、長く抱え込んできた疲れがにじんでいることがあります。本記事では、介護する家族が息抜きのために利用できる「ショートステイ(短期入所)」の仕組みと、帰省や年末年始の忙しい時期に上手に使うための準備の仕方を、具体的な声かけ例とあわせてご紹介します。
ショートステイって何?「休めない」介護の負担との関係
同居介護者が抱えやすい「休めない」疲れ
同居して介護をしている家族は、通いの介護と違って「介護から離れる時間」そのものが生活の中にほとんどありません。買い物や通院の付き添いはもちろん、夜中の物音にも気を張り続け、気づかないうちに睡眠不足や肩こり・腰痛を溜め込んでいる方が多くいます。本人に「疲れていない?」と聞いても「大丈夫」としか返ってこないことも多く、介護者自身が自分の疲れに気づきにくいのも、この負担の特徴のひとつです。
ショートステイ(短期入所)の基本的な仕組み
ショートステイは、介護保険の「短期入所生活介護・短期入所療養介護」というサービスで、数日から1週間程度、高齢の家族が施設に泊まり、食事や入浴などの介助を受けながら過ごせる仕組みです。要介護認定を受けていれば、ケアプランに組み込むことで介護保険の範囲内で利用でき、利用料の目安は施設の種類や部屋のタイプによって異なります。詳しい金額や空き状況は、担当のケアマネジャーや施設に直接確認するのが確実です。
持病の管理や医療的なケアが必要な場合は「短期入所療養介護」、日常生活の介助が中心であれば「短期入所生活介護」が主な選択肢になります。どちらが合うかは本人の体の状態によって変わるため、まずはケアマネジャーに今の状況を伝えて、適した施設の候補を一緒に探してもらうとよいでしょう。
「まだ大丈夫」と先延ばしにするリスク
「まだ自分でやれる」「他人に預けるのは申し訳ない」という気持ちから、ショートステイの利用をためらう介護者は少なくありません。しかし無理を重ねた末に介護者自身が体調を崩してしまうと、結果的に本人の生活も大きく変わってしまいます。ショートステイは「限界になってから使うもの」ではなく、「限界になる前に定期的に使うもの」と考えることが、長く介護を続けるための一つの工夫です。
介護の負担が重なると、休む発想自体が消えてしまうことがあります。「〇〇さんも疲れていると思うので、月に一度は泊まりでお願いしてみませんか」と、ケアマネジャーや周囲の家族から声をかけてあげることも、本人が一歩を踏み出すきっかけになります。もし心身の不調が続いているようであれば、かかりつけ医や地域包括支援センターに早めに相談することも忘れないでください。
介護疲れのサインについては、以下の記事でも詳しく取り上げています。あわせてご覧ください。
年末年始に向けたショートステイの使い方
申請から利用までの流れとタイミング
ショートステイは人気の時期ほど予約が埋まりやすく、特に年末年始は施設側も休館日や人員体制の調整があるため、通常より早めの申し込みが必要になることが多いです。利用を考えている場合は、遅くとも1〜2か月前にはケアマネジャーに相談し、候補日を複数挙げておくと調整がスムーズになります。
まだ要介護認定を受けていない場合は、この手続きから始める必要があるため、より早めの行動が重要になります。申請の流れは以下の記事でまとめています。
ケアマネジャーへの伝え方・声かけ例
「迷惑をかけたくない」と伝え方に悩む方も多いですが、具体的な状況を伝えるほど調整してもらいやすくなります。例えば「年末年始に家族で○日ほど外出予定があり、その間お願いできる施設を探しています」「最近夜中に何度も起きてしまい、こちらの体力が持たなくなってきました」といった形で、日程と理由をセットで伝えると具体的な提案を受けやすくなります。
また、普段の介護そのものを軽くできる福祉用具のレンタルを見直すことも、介護者の負担を減らす一つの方法です。
なお、ショートステイで数日間の時間ができたときは、介護者自身の体をいたわる時間にあてることも大切です。たまった肩こりや腰の張りをケアできる、こうしたアイテムを取り入れてみるのも一つの方法です。
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利用するときの注意点・よくある失敗
利用が決まった後も、いくつか気をつけておきたい点があります。まず、本人が「知らない場所に急に泊まる」ことに不安を感じやすいため、事前に施設の写真を見せたり、「〇日間だけのお泊まり」と繰り返し伝えておくと安心材料になります。また、普段使っている薬や持病の情報、かかりつけ医からの指示内容は、口頭だけでなくメモにして施設へ渡しておくと、現地での対応がスムーズになります。持病や服薬について不安な点がある場合は、ショートステイ利用前にかかりつけ医や地域包括支援センターに相談しておくと安心です。
当日になって慌てないよう、持ち物は事前にリスト化しておくと安心です。施設ごとに細かい指定が異なることもあるため、最終的には利用先の施設に確認してください。
- 健康保険証・介護保険被保険者証・医療費の助成関連の書類
- 普段使っている薬(お薬カレンダーや薬局の説明書も一緒に)
- 何日分かの着替えと、使い慣れた歯ブラシ・タオルなどの身の回り品
- 普段使っている眼鏡・補聴器・入れ歯、杖やシルバーカーなどの補助具
- 本人が安心できる小さな私物(愛用の湯のみや写真など)
特に薬については、施設によって管理方法や持参のルールが異なります。飲み忘れや飲み間違いを防ぐためにも、量や飲むタイミングの指示は必ず文書で確認してもらい、わからないことがあれば利用前にかかりつけ医や施設の看護職員に相談しておくことをおすすめします。
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ショートステイの持ち物をまとめておくと準備が楽に
さらに、利用後に「施設のほうが楽そうだった」「逆に落ち着かなかった」など、本人の反応に差が出ることもあります。一度の利用で判断せず、2〜3回試してみて本人に合う施設を見つけていく、という心構えでいるとよいでしょう。相性が悪いと感じた場合は、ケアマネジャーに相談すれば他の施設を提案してもらえることもあります。
頼ることは、介護を続けるための工夫
現場で多くの介護家族と接してきた中で感じるのは、「頑張れる人」ほど一人で抱え込みやすいということです。遠くに住む家族を持つ身としても、実家の様子を聞くたびに「もっと早く誰かに頼っていれば」と思う場面を何度も経験してきました。
ショートステイは、介護を放棄することではなく、介護を続けていくための準備です。年末年始という節目を機に、一度ケアマネジャーに相談するところから始めてみませんか。
この記事の執筆者について
介護福祉の現場で22年以上、訪問介護や高齢者施設での勤務、自宅での家族介護を経験してきました。現在も遠方に暮らす高齢の家族がおり、「離れて暮らす家族を見守る」ことの難しさを実感者として日々感じています。本記事も、そうした現場と実生活の両方の経験をもとに執筆しています。
