先日実家に顔を出すと、父が「最近、車にクラクションを鳴らされることが増えた」とぽつりと言いました。聞いてみると、夕方のスーパーからの帰り道、薄暗くなった道を歩いていたときのことだったそうです。本人は気をつけているつもりでも、暗い色の上着を着て歩く父の姿は、車の運転手からはほとんど見えていなかったのかもしれません。10月後半から12月にかけては日没が一気に早まり、高齢者が巻き込まれる交通事故が増える時期だと言われています。この記事では、薄暮の時間帯に親を守るための反射材・ライト選びと、家族でできる工夫を紹介します。
秋から冬に増える「薄暮時間帯」の交通事故
なぜ夕方の事故が増えるのか
警察庁の交通事故統計でも、日没前後の「薄暮時間帯」に歩行中の高齢者が死亡する事故が集中して発生することが指摘されています。昼間と比べて視界が急に暗くなるこの時間帯は、運転手が歩行者に気づくタイミングが遅れやすく、ドライバー側の反応がどうしても追いつかないケースが多いのです。しかも日没直後の数十分は、街灯がまだ十分に機能していない地域もあり、歩行者側の対策がより重要になります。普段から車通りの多い道でなくても、見通しの悪い交差点や信号のない横断歩道では同じようにリスクが高まります。
高齢者が被害に遭いやすい2つの要因
一つは、暗い色の服装で歩くことが多く、街灯や車のライトに照らされても浮き上がって見えにくいことです。もう一つは、本人が「自分は見えている」と感じていても、実際には運転手から見えていないというギャップです。目の衰えによって、歩行者自身も車の接近に気づきにくくなっている場合もあります。加齢とともに視野がやや狭くなったり、暗い場所での見え方が変化したりすることも、本人が気づかないうちにリスクを高めている一因です。
「お父さん、暗い服で出かけてるけど大丈夫?」と聞くと、「何十年も同じ道を歩いてるから平気だよ」と返ってくる。こうしたやり取りに心当たりのある方も多いのではないでしょうか。長年歩いてきた道だからこそ、本人の中では「見慣れた安全な道」という感覚が強く、実際の見えやすさとのズレに気づきにくいという面もあります。私自身、遠方の家族を見守る中で、電話口の「大丈夫」という一言をそのまま信じず、具体的に何を身につけて出かけているかまで聞くようにしてから、ようやく実際の装備の心配ごとが見えてきた経験があります。
特に注意したいのは10月後半から12月
日没時間が最も早くなるのは12月ですが、事故が増え始めるのは10月後半からと言われています。「まだ明るいから大丈夫」と思っている時間帯に、実は急速に暗くなっていることが多いのです。買い物や散歩の時間を、日没より早い時間に少しずらすだけでも、リスクを大きく減らせます。足元が滑りやすくなる季節でもあるため、滑りにくい防寒ブーツへの見直しと合わせて考えておくと、外出全体の安全性を高められます。
今日からできる対策|反射材・ライトの選び方
杖やシルバーカーにライトを一体化する
毎日使う杖やシルバーカーにライトが付いていれば、わざわざ身につけ忘れる心配がありません。最近はLEDライトが本体に内蔵された杖も増えており、歩行の補助と夜間の視認性確保を同時に叶えられます。杖を新しく選ぶタイミングであれば、ライト付きのタイプを検討してみる価値があります。すでに使っている杖がある場合も、無理に買い替えずに後付けの反射テープを巻くだけでも視認性は大きく変わります。
服やバッグに後付けできる反射材・クリップライト
買い替えまでは考えていない場合は、後付けできる反射材やクリップ式のライトも便利です。バッグの持ち手や上着の袖口など、運転手の視線が届きやすい位置に取り付けるのがポイントです。「今日はこれを付けて行こうね」と声をかけながら、外出前の習慣にしてしまうと、身につけ忘れを防ぎやすくなります。
選ぶときのチェックポイントをまとめておきます。価格帯も幅広いので、まずは手に取りやすいものから試してみるのがおすすめです。
- 点灯だけでなく点滅モードがあるか(点滅の方が気づかれやすい)
- 電池式か充電式か(交換・充電の手間を考えて選ぶ)
- 服やバッグに簡単に取り付け・取り外しができるか
- 雨の日でも使える防水仕様か
なお、日常使いできるアイテムとしてこちらも参考にしてみてください。
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歩行補助とライトが一つになって身につけ忘れを防げます
家族ができる声かけと習慣づくり
「暗くなる前に帰ろうね」「出かける前にライトを点けていこうか」といった声かけを、電話や帰省のタイミングで繰り返すことも効果的です。本人が「大丈夫」と言っていても、実際の視認性は本人の感覚とは別の話だと伝えておくと、納得して対策を続けてもらいやすくなります。遠方に住んでいて毎回の外出に付き添えない場合は、ライトや反射材を玄関のよく見える場所に置いておくよう頼んでおくのもひとつの工夫です。
玄関から道路に出るまでの間も暗くなりやすいので、足元センサーライトを併用すると、家の中から外に出るまでの転倒リスクも合わせて減らせます。
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バッグや袖口に後付けできる手軽さが魅力
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注意点・よくある失敗
反射材を上着の内側に付けてしまう
せっかく反射材を購入しても、上着の内側や鞄の中にしまい込んでしまうと効果がありません。外側の、できるだけ高い位置・広い面積に取り付けることが、運転手からの視認性を上げるポイントです。本人なりに「邪魔にならないように」としまい込んでしまうケースも多いので、取り付け方まで一緒に確認しておくと安心です。「せっかく買ったのに付け方が逆だった」という話は珍しくなく、一度は実際に身につけた状態を見せてもらうのがおすすめです。
ライトの電池切れ・充電忘れ
ライトは電池切れや充電忘れに気づきにくいという弱点があります。月に一度、帰省や電話のタイミングで「ライトはちゃんと点く?」と確認する習慣を作っておくと安心です。遠方に住む家族であれば、帰省時にまとめて電池を交換しておくのも一つの方法です。できれば予備の電池を自宅にストックしておいてもらうと、本人だけでも交換がしやすくなります。
一人で抱え込まず相談することも大切
転倒や交通事故のリスクが心配な場合、本人の歩行能力や視力の変化が背景にあることもあります。気になる変化があれば、かかりつけ医や地域包括支援センターに相談することも検討してみてください。本記事の内容は一般的な情報提供であり、個別の症状や事故リスクの判断に代わるものではありません。日々の様子を一番近くで見ている家族の気づきが、こうした相談のきっかけになることも少なくありません。
まとめ|小さな一つで、見える安心を
反射材やライトは、数百円から数千円で用意できる小さな工夫です。けれど、それが運転手に気づいてもらえるかどうかの大きな差になります。遠くに住む家族として、毎日の外出を隣でチェックすることはできません。けれど、次に実家に帰ったときに、まず玄関にある杖や普段使うバッグを見てみてください。そこに一つライトを足すだけで、暗くなった帰り道の安心感が変わるはずです。今日の電話で、「暗くなる前に帰ってきてね」の一言を、いつもの会話に添えてみませんか。小さな習慣の積み重ねが、薄暮の時間帯を少しずつ安心なものに変えていってくれます。
この記事の執筆者について
介護福祉の現場で22年以上、訪問介護や高齢者施設での勤務、自宅での家族介護を経験してきました。現在も遠方に暮らす高齢の家族がおり、「離れて暮らす家族を見守る」ことの難しさを実感者として日々感じています。本記事も、そうした現場と実生活の両方の経験をもとに執筆しています。
